金がいるのか分りませんでしたの。これで、分りましたわ。みんな、学生ばかりですから、この公演の途中で、資金が足りなくなって、困っているのだと思いますの。そして、私のところまで、あんなとばっちりのようなムリな電報を寄越したのでございますわ。これを見るまでは、何が何だか解らなかったんですもの。」と、新子は、少し浮かれてでもいるように、喋りつづけた。
「そうですか。いや、それで安心しました。貴女のお姉さまなら、僕は欣んで後援しようじゃありませんか。」
新子は、嬉しくなって、頬がカーッとなった。
五
「失礼ですが、電報では、いくらほどご入用だと云うのですか。」準之助氏は、続けて訊いた。
新子は、準之助氏と、おずおず眼を合せながら云った。
「もしも、こんなことが許して頂けるんでしたら……私の月々頂くものを、半年分ほどまとめて、拝借できないでしょうか。」
「いや、いや、月給は月給、これはこれですよ。」と、準之助氏は、手を振りながら、
「そのくらいでいいんでしたら、僕が貴女のお姉さんを後援する意味で、差しあげましょう。今日にでも、東京の事務所の方へ電話をして、お宅の方へお届けし
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