び前川の周囲に、立ち寄らせないことにしようと、頭の中でいろいろ効果のある云い廻しを考えた後、
「こんな生活なんて、大抵|自尊心《プライド》のない、無教育の女がやることですけれど、貴女は不思議ですわね。専門教育をお受けになったくせに、よくこんな寄生虫的な生活がお出来になるのですね。」と、(つまり、貴女は教育があるのに、人の妾《めかけ》になるのか)と、云わんばかりの言葉で嘲った。
新子は、たとい貞操を売っていないにしろ、形式だけはそう思われても仕方のない生活をしているだけに、夫人の非難の少くとも半分は胸にヒシヒシと徹《こた》えるので、心はしめ[#「しめ」に傍点]木にかけられたように苦しく、なぜこんな生活に、足を踏み入れたのだろうかと、我が身があさましく思われて、危く涙が出かかった。
その上、新子がだまっていればいるほど、それはいよいよ夫人の気勢を、煽ることになるらしく夫人はいよいよ図に乗って、
「この店で働いているなんて云えば、とても体裁がいいけれど……私は、良人が、こんな不見識な商売をしていることだって、我慢できないんですよ。私の実家や、お友達にでも知れようものなら、良人はともかくも私までが、どんなに恥しい思いをすることでしょう。しかも、以前、私の家で家庭教師をした女を、その店のマダムに使っているなんて、分ろうものなら、それこそ、いい加減|醜聞《スキャンダル》じゃないでしょうかしら。それにしても、貴女に長く子供達を委せておかなかったことは、こうなってみると、ほんとうによかったと思いますわ。」
夫人は一層意地わるく、ジリジリと新子を責め始めて、
「あのまま貴女に長く居て頂こうものなら、それこそ私の神聖な家庭まで、汚されたかもしれませんわ。」
「まあ! 奥さま、それはどういうことなんですか。」と、新子も堪りかねて云った。
「どういうことだか、貴女の胸に手を当てて、訊いてごらんなさい!」
「だって、奥さま、私前川さんと何も邪《やま》しい!」
新子の口惜し涙は、とうとう頬に糸を引くまでになって、身をふるわせながら、必死に叫んだ。
「じゃ、お訊きします。貴女は、この部屋で、前川とお会いになったでしょう。それとも、お会いになりません? この部屋、このベッドなんか置いてある部屋で!」
夫人の額にも、激しい嫉妬の影がひらめいた。
四
西洋では、男女二人
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