うた。
三七日とは、三七二十一日である。その位の日数は、余裕《よゆう》はあったので、氏長はこの家に逗留することにした。
二
ところがこの女の鍛錬法《たんれんほう》というのが甚《はなは》だおかしい。その晩から、強飯《こわめし》をたくさん作って喰《た》べさした。女みずからにぎりめしにして喰べさしたが、かたくて初はどうしても噛《か》み割ることが出来なかった。初の七日は、どうしても喰いわることが出来なかった。中の七日は、ようよう喰いわることが出来たが、最後の七日には見事に喰い割ることが出来た。すると、女はさあ都へいらっしゃい、こうなればあなたも相当なことは出来るだろうといって、都へ立たした。この二人が情交をむすんだか、どうかはくわしく書かれていない。この女は、高島の大井子という大力女である。田などもたくさん持って、自分で作っていた。
ある年、水争いがあって村人達が大井子の田に水をよこさないようにした。すると大井子は夜にまぎれて表のひろさ六、七尺もある大石を、水口によこさまに置いて、水を自分の田に流れ込《こ》むようにした。翌日になると、村人が驚《おどろ》いたが、その石を動
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