たむろいた》し居候処へ、二手に別れ、夜四つ時頃打入候処、一ヶ所は一人も居り申さず、一ヶ所は多数潜伏し居り、兼て覚悟の徒党故、手向ひ戦闘|一時《いつとき》余の間に御座候」
局中とは新撰組のことだ。一時余りとは、今日では二時間余である。二時間余も入乱れて、戦つたのであるから、その激闘振りも察せられよう。
「打留七人、手疵|為[#レ]負《おはせる》者四人、召捕二人、右は局中の働《はたらき》に候。漸く事済み候跡へ、御守護職、御所司代の人数三千余人出張に相成り、夫より屯所へ|被[#二]打入[#一]《うちいられ》候処、会侯の手に四人召捕、一人打取る。桑侯手に一人召捕。
翌六日昼九つ時(正午)人数引揚申候。前代|未曾有《みぞう》の大珍事に御座候」
以上の通《とほり》、池田屋襲撃は、殆んど新撰組の独擅場《どくせんぢやう》で、彼等が得意になるのは当然だらう。
近藤の家書は、以下続いてゐる。
「下拙《げせつ》僅かの人数引連れて、出口に固めさせ、打込候者は、拙者始め、沖田、永倉、藤堂、倅周平、右五人に御座候。
一時余りの戦闘にて、永倉新八の刀は折れ、沖田総司、刀の帽子折れ、藤堂平助刀はさゝらの如く
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