瞬間動作を止めて心のうちで化石してしまったように思えた。彼のその時まで、のんびりとしていた心持が、膠《にかわ》のように、急に硬着してしまった。彼の心全体が、その扉をことごとく閉じて、武装してしまったという方が、いちばんこの時の心持を、いい現しているかも知れなかった。雄吉は、身体にも心にも、すっかり戦闘準備を整えて、青木の近よるのを待った。
初めて青木を発見したのは、ほんの二、三間前であったのだから、青木が雄吉に近よるのは、二、三秒もかからなかった。雄吉の心持にも劣らないほどの大きな激動が、青木の心のうちにも、存在しないはずはなかった。その上、青木は雄吉のほとんど仇敵に対するような、すさまじい目の光を見ると、心持瞳を伏せたまま近よった。
二人は目を見合わした。雄吉の目は相手に対する激しい道徳的叱責と、ある種の恐怖に燃えていた。青木の目は、それに対して反抗に輝きながら、しかも不思議に屈従と憐憫《れんびん》を乞うような色を混じえていた。二人はそれでも頭を下げ合うた。
「やあ!」雄吉は、硬ばったような声を出した。
「やあ!」青木は、しわがれて震える声を出した。雄吉は、さっきから青木に対して
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