う繰り返した青年の顔は、見る/\色を変へた。彼は、心の中で、ある恐ろしい事実にハツと思ひ当つたのである。
「それは本当でせうか。貴君は、それを断言する証拠がありますか。」
 青年の眼は、興奮のために爛々と輝いた。
「ありますとも。お兄《あにい》さんの遺言と云ふのも、お兄さんを弄んだ婦人に対して、お兄《あにい》さんの恨みを伝へて呉れと云ふことだつたのです。」
「うゝむ!」
 青年は、低く呻《うな》るやうに答へた。
「実は、私はその恨みを伝へようとしたのです。が、その婦人は、恨《うらみ》を物の見事に跳ねつけてしまつたのです。そればかりでなく、死んだお兄《あにい》さんを辱めるやうなことまでも云つたのです。その婦人はお兄《あにい》さんを弄んで、間接に殺しながら、その責任までも逃れようとしてゐるのです。青木さんが、自殺の決心をしたとしても、それは私《わたくし》の故《せゐ》ではありません、あの方の弱い性格の故《せゐ》だと、その婦人は云つてゐるのです。そればかりではありません……」
 紳士も、自分自身の言葉に可なり興奮してしまつた。

        五

 紳士は興奮して叫び続けた。
「そればかり
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