るわ。ねえ、後生だから、訳を云つて下さいね。」
さう云つてゐる母の声に、烈しい愛と熱情とが、籠つてゐることを、疑ふことは出来なかつた。
五
その夜は、美奈子も強ひて争ひかねて、重い足を返しながら、部屋へ帰つて来た。
翌日になると、夜が明けるのを待ち兼ねてゐたやうに、美奈子は母に云つた。
「お母様、妾《わたし》葉山へ行つて来ようかと思つてゐるの。兄さんにも、随分会はないから、どんな容子だか、妾《わたし》見て来たいと思ふの。」
が、母は許さなかつた。美奈子の容子が、何となく気にかゝつてゐるらしかつた。
「もう二三日してから行つて下さいね。それだと、妾《わたし》も一緒に行くかも知れないわ。箱根も妾《わたし》何だか飽き/\して来たから。」
その日一杯、平素は快活な瑠璃子は、妙に沈んでしまつてゐた。青年には、口一つ利かなかつた。美奈子にも、用事の外は、殆ど口を利かなかつた。たゞ一人、縁側《ヴェランダ》にある籐椅子に、腰を降しながら、一時間も二時間も、石のやうに黙つてゐた。
瑠璃子の態度が、直ぐ青年に反射してゐた。瑠璃子から、口一つ利かれない青年は、所在なささうに、
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