刻ちらりと見た西洋人の夫妻たちが通り過ぎてゐるのだらうと思つた。
が、その足音は不思議に、だん/\近づいて来た。二言三言、話声さへ聞えて来た。それはまさしく、外国語でなく日本語であつた。しかも、何だか聞きなれたやうな声だつた。彼女は『オヤ!』と思ひながら、振り返つて闇の中を透して見た。
闇の中に、人影が動いた。一人でなく二人連だつた。二人とも、白い浴衣《ゆかた》を着てゐるために、闇の中でも、割合ハツキリと見えた。美奈子は、ぢつと二人が近よつて来るのを見詰めてゐた。十秒、二十秒、その裡にそれが何人《なんぴと》であるかが分ると、彼女は全身に、水を浴びせられたやうに、ゾツとなつた。それは、夜の目にも紛れなく青年と母の瑠璃子とであつたからである。而も、二人は、彼等が恋人同志であることを、明かに示すやうに、身体が触れ合はんばかりに、寄り添うて歩いてゐるのである。闇の中で、しかとは判らないが、母の左の手と、青年の右の手とが、堅く握り合せられてゐるやうに、美奈子には感ぜられた。
美奈子は、恐ろしいものを見たやうに、身体がゾク/\と顫へた。彼女は、地が口を開いて、自分の身体を此のまゝ呑んで呉れゝ
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