。が、その人は到頭姿を現はさない。母も前言を打ち消すやうな事を言つてゐる。美奈子の心配はなくなつた。それと同時に、彼女の歓喜も消えた。たゞ白々しい寂しさ丈《だけ》が、彼女の胸に残つてゐた。
美奈子の心持を少しも知らない瑠璃子は、美奈子が沈んだ顔をしてゐるのを慰めるやうに言つた。
「美奈さんなんか、何うお考へになつて。妾達《わたしたち》女性を追うてゐるあゝ云ふ男性を。あゝ云ふ女性追求者と云つたやうな人達を。」
美奈子は黙つて答をしなかつた。母が交際《つきあ》つてゐる人達を、厭だとも言へなかつた。それかと言つて、決して好きではなかつた。
「あんな人達と結婚しようなどとは、夢にも考へないでせうね。男性は男性らしく、女性なんかに屈服しないでゐる人が、頼もしいわね。」
美奈子も、ついそれに賛成したかつた。が、青木と呼ばれるらしい青年も、やつぱりさうして男性らしくない女性追求者の一人かと思ふと、美奈子はやつぱり黙つてゐる外はなかつた。
「妾達《わたしたち》を、追うて来る人でも、身体と心との凡てを投じて、来る人はまだいゝのよ。あの人達なんか遊び半分なのですもの。狼の散歩|旁々《かた/″\》人の
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