で待つても見えなかつた。その男性達は、美奈子の方には、殆ど注意を向けなかつた。たゞ美奈子の顔を、外《よそ》ながら知つてゐる二三人が軽く会釈した丈《だけ》だつた。
「奥さん! まだ判つてゐることがあるのですがね。」
 暫くしてから、紺の背広を着た会社員らしい男が、おづ/\さう云つた。
「何です? 仰しやつて御覧なさい。」
 夫人は、微笑しながら、しかも言葉|丈《だけ》は、命令するやうに云つた。
「云つても介意《かま》ひませんか。」
「介意ひませんとも。」
 夫人は、ニコ/\と絶えず、微笑を絶たなかつた。
「ぢや申上げますがね。」彼は、夫人の顔色を窺ひながら云つた。「青木君を、お連れになると云ふぢやありませんか。」
 それに附け加へて、皆は口を揃へるやうに云つた。
「何です、奥さん。当つたでせう。」
 皆の顔には、六分の冗談と四分の嫉妬が混じつてゐた。
「奥さん、いけませんね。貴女は、皆に機会均等だと云ひながら、青木君兄弟にばかり、いやに好意を持ち過ぎますね。」
 小山と云ふ外交官らしい男が、冗談半分に抗議を云つた。
 美奈子は、母が何と答へるか、ぢつと聞耳を立てゝゐた。

       
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