て来るのを待つてゐるのだらう。其処に、ボンヤリ立つてゐた。
彼は不思議さうに、美奈子をジロ/\と見たが、美奈子が此の家の家人であることに、やつと気が付いたと見え、少し周章《あわて》気味に会釈した。
美奈子も周章て、頭を下げた。彼女の白いふつくりとした頬は、見る/\染めたやうに真赤になつた。その時に丁度、取次の少年が帰つて来た。青年は待ち兼ねたやうにその後に従《つ》いて入つた。
美奈子が、玄関から上つて、奥の離れへ行かうとして客間の前を通つたとき、一頻り賑かな笑ひ声が、美奈子の耳を衝いて起つた。今までは、さうした笑ひ声が、美奈子の心を擦《かす》りもしなかつた。本当に平気に聞き流すことが出来た。が、今日はさうではなかつた。その笑ひ声が、妙に美奈子の神経を衝き刺した。美奈子の心を不安にし、悩ました。あの青年と、自由に談笑してゐる母に対して、羨望に似た心持が、彼女の心に起つて来るのを何《ど》うともすることも出来なかつた。
八
その日曜の残りを、美奈子はそは/\した少しも落着かない気持の裡に過さねばならなかつた。かの青年が、自分の家の一室にゐることが、彼女の心を掻き擾
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