も、美奈子は何時になく幾度も幾度も弾き違へた。
「美奈さんは、今日は何《ど》うかしてゐるぢやないの?」と、母から心の裡の動揺を、見透されると、美奈子の心は、愈々掻き擾《みだ》されて、到頭中途で合奏を止めてしまつた。
午後になるのを待ち兼ねたやうに、美奈子はお墓詣りに行くための許しを、母に乞うた。何時もはあんなに気軽に、口に出せることが、今日は何だか、云ひにくかつた。
墓地は、何時ものやうに静かだつた。時候がもうスツカリ夏になつた為か、此の前来たときのやうに、お墓詣りの人達は多くはなかつた。が、周囲は、静寂であるのにも拘はらず、墓地に一歩踏み入れると同時に、美奈子の心は、ときめいた。何だか、そは/\として、足が地に付かなかつた。恐いやうな怖ろしいやうな、それでゐて浮き立つやうな唆られるやうな心地がした。
父母のお墓の前に、ぢつと蹲まつたけれども、心持はいつものやうに、しんみり[#「しんみり」に傍点]とはしなかつた。こんな心持で、お墓に向つてはならないと、心で咎めながらも、妙に心が落着かなかつた。
彼女は、平素《いつも》とは違つて、何かに周章《あわて》たやうに、父母の墓前から立ち上
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