直ぐ帰るのは惜しいわ。ぶら/\散歩しながら、帰りませう。」
さう云ひながら、美奈子は女中を促して、懐しい父母の墓を離れた。
何時もは、歩き馴れた道を、青山三丁目の停留場に出るのであつたが、其日は清い墓地内を、当もなくぶら/\歩くために、わざと道を別な方向に選んだ。
自分の家の墓地から、三十間ばかり来たときに、美奈子はふと、美しく刈り込まれた生籬《いけがき》に囲まれた墓地の中に、若い二人の兄妹《きやうだい》らしい男女が、お詣りしてゐるのに気が付いた。
美奈子は、軽い好奇心から、二人の容子を可なり注意して見た。兄の方は、二十三四だらう。銘仙らしい白い飛白《かすり》に、袴を穿いて麦藁の帽子を被つた、スラリとした姿が、何処となく上品な気品を持つてゐた。妹はと見ると、まだ十五か十六だらう、青味がかつた棒縞のお召にカシミヤの袴を穿いた姿が、質素な周囲と反映してあざやかに美しかつた。
美奈子達が、段々近づいてその墓地の前を通り過ぎようとしたとき、ふと振り返つた妹は、美奈子の顔を見ると、微笑を含みながら軽く会釈した。
三
妹らしい方から会釈されて、美奈子も周章《あわ》て
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