日曜の午後を、彼女はもつと有意義に過すこともあつた。それは、青山に在る父と母とのお墓にお参りすることであつた。
 彼女は、女中を一人連れて、晴れた日曜の午後などを、わざと自動車などに乗らないで、青山に父母の墓を訪ねた。
 彼女は夢のやうな幼い時の思出などに耽りながら、一時間にも近い間、父母の墓石の辺《あたり》に低徊してゐることがあつた。
 六月の終りの日曜の午後だつた。その日は死んだ母の命日に当つてゐた。彼女は、女中を伴つて、何時ものやうにお墓参りをした。
 墓地には、初夏の日光が、やゝ暑くるしいと思はれるほど、輝かしく照つてゐた。墓地を劃《しき》つてゐる生籬《いけがき》の若葉が、スイ/\と勢ひよく延びてゐた。美奈子は裏の庭園で、切つて来た美しい白百合の花を、右手《めて》に持ちながら、懐しい人にでも会ふやうな心持で、墓地の中の小道を幾度も折れながら、父母の墓の方へ近づいて行つた。

        二

 晴れた日曜の午後の青山墓地は、其処の墓石の辺にも、彼処《かしこ》の生籬の裡にも、お墓詣りの人影が、チラホラ見えた。
 清々しく水が注がれて、線香の煙が、白くかすかに立ち昇つてゐるお墓
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