彼女を追ふ男性が、蠅のやうに蒐まつて来る客間《サロン》には、決して美奈子を近づけなかつた。
 従つて、美奈子は母の客間に、どんな男性が蒐まつて来るのか、顔|丈《だけ》も知らなかつた。無論紹介されたことなどは、一度もなかつた。たゞ門の出入などに、さうした男性と、擦れ違ふことなどはあつたが、たゞ軽い黙礼の外は口一つ利かなかつた。
 母が日曜の午後を、華麗な客間《サロン》で、多くの男性に囲まれて、女王のやうに振舞つてゐるのを外《よそ》に、美奈子は自分の離れの居間に、日本室の居間に、気に入りの女中を相手に、お琴や挿花のお復習《さらひ》に静かな半日を送るのが常だつた。
 時々は、客間に於ける男性の華やかな笑ひ声が、遠く彼女の居間にまで、響いて来ることがあつたが、彼女の心は、そのために微動だにもしなかつた。さうした折など、女中達が、瑠璃子夫人の奔放な、放恣な生活を非難するやうに、
「まあ! 大変お賑かでございますわね。奥様もお若くていらつしやいますから。」
 などと、美奈子の心を察するやうに、忠勤ぶつた蔭口を利く時などには、美奈子は、その女中をそれとなく窘《たしな》めるのが常だつた。
 が、
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