の軍服に気が付いたとき、信一郎の頭に、電光のやうに閃いたものは、村上海軍大尉といふ名前であつた。青年が、遺して行つた手記の中に出て来る村上海軍大尉と云ふ名前だつた。
青木淳が、烈しい忿恨を以て、ノートに書き付けた文句が、信一郎の心に、アリ/\と甦つて来た。
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『昨日自分は、村上海軍大尉と共に、彼女の家の庭園で、彼女の帰宅するのを待つてゐた。その時に、自分はふと、大尉がその軍服の腕を捲り上げて、腕時計を出して見てゐるのに気が付いた。よく見ると、その時計は、自分の時計に酷似してゐるのである。自分はそれとなく、一見を願つた。自分が、その時計を、大尉の頑丈な手首から、取り外したときの駭きは、何《ど》んなであつたらう。若《も》し、大尉が其処に居合せなかつたら、自分は思はず叫声を挙げたに違《ちがひ》ない。』
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信一郎は、青木淳の弟と語つてゐる軍服姿の男を見たときに、それが手記の中の村上大尉であることに、もう何の疑《うたがひ》もなかつた。もし、それが、村上海軍大尉であるとしたならば、青木淳と大尉との双方に、同じ白金《プラチナ》の時計を与へて、『こ
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