ないと、此処の客間《サロン》も淋しくていけない。」
 三宅は、後輩が先輩に迎合するやうな、口の利き方をした。
「さあ! 秋山さん! 此方《こつち》へお掛けなさいませ。本当によい所へ入《い》らしつたわ。今貴君に断定を下していたゞきたい問題が、起つてゐますのよ。」
 さう云ひながら、今度は夫人自ら、空いた椅子を、自分の傍へ、置き換へた。
「さあ! お掛けなさいませ! 貴君の御意見が、伺ひたいのよ。ねえ! 三宅さん!」
 信一郎に、説き圧《お》されてゐた三宅は、援兵を得たやうに、勇み立つた。
「さあ、是非秋山さんの御意見を伺ひたいものです。ねえ! 秋山さん、今明治時代の第一の小説家は、誰かと云ふ問題が、起つてゐるのですがね、貴君《あなた》のお考へは、何うでせう。かう云ふ問題は、専門家でなければ駄目ですからね。」
 三宅は、最後の言葉を、信一郎に当てこするやうに云つた。瑠璃子夫人までが、その最後の言葉を説明するやうに信一郎に云つた。
「此の方、秋山正雄さん、御存じ! あの赤門派の新進作家の。」
 秋山正雄、さう云はれて見れば、最初見覚えがあると思つたのは、間違つてゐなかつたのだ。信一郎が一高の
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