て、何とも答へなかつた。たゞ勝平が発してゐるらしい低いうめき声が聞える丈《だけ》だつた。
「旦那! 旦那! しつかりなさい!」
さう云ひながら、喜太郎は暗い座敷の中を、カンテラで照しながら、駈け込んだ。その光で、ほの暗く照し出された大広間の中央に、勝平は仰向に打ち倒れながら、苦しさうにうめいてゐるのだつた。
「旦那! 旦那! しつかりなさい! 喜太郎が参りましたぞ! 泥棒は何うしただ!」
喜太郎は、勝平の耳許で勢よく叫んだ。が、勝平はたゞ低く、喘息病みか何かのやうに咽喉のところで、低くうめく丈《だけ》だつた。
「旦那! 怪我をしたか。何処だ! 何処だ!」
老人は、狼狽しながら、その太い堅い手で、勝平の身体を撫で廻した。が、何処にも傷らしい傷はなかつた。が、それにも拘はらず、半眼に開かれてゐる勝平の眼は、白く釣り上がつてゐる。
「あゝ! こりやいけねえ。奥様、こりやいけねえぞ。」
さう云ひながら、老人は勝平の身体《からだ》を半《なかば》抱き起すやうにした。が、巨きい身体は少しの弾力もなく石の塊か何かのやうに重かつた。
瑠璃子は、遉《さすが》に驚いた。
「もし、貴君! もし貴君!
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