して信頼され愛されさへすれば、どんな犠牲を払つてもいゝと思つてゐるのです。俺《わし》は、先刻《さつき》自動車から降りて、貴女と顔を見合せた時、俺《わし》は結婚して以来初めて幸福を感じたのです。今日|丈《だけ》は、貴女が心から俺《わし》を迎へて呉れてゐる。貴女の笑顔が心からの笑顔だと思ふと、俺《わし》は初めて結婚の幸福を感じたのです。が、それも落着いて考へて見ると、貴女が俺《わし》を喜んで迎へて呉れたのも、夫としてではない、たゞこんな恐ろしい晩に必要な男手として喜んでゐるのだと思ふと、又急に情なくなるのです。俺《わし》が貴女を、賤しい手段で、妻にしたと云ふ罪を、俺《わし》の貴女に対する現在の真心で浄めさせて下さい!」
 勝平は、酒のために、気が狂つたのではないかと思はれるほどに激昂してゐた。瑠璃子は相手の激しい情熱に咽せたやうに何時の間にか知らず/\、それに動かされてゐた。
「瑠璃子さん、貴女も今までの事は、心から水に流して、俺《わし》の本当の妻になつて下さい。貴女が心ならずも、俺《わし》の妻になつたことは、不幸には違ひない。が、一旦妻になつた以上、貴女が肉体的には、妻でないにしろ、世間
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