だ半年にしかなりませんのですもの。それに、今度の話でございませう、それに、いろ/\な事件で、興奮して、まだその興奮が続いてゐるのでございませう。結婚生活に対する何の準備も出来なかつたのでございますもの。貴君の本当の妻になるのには、もう少し心の準備が欲しいと思ひますの。貴君に対する愛情と信頼とを、もつと心の中で、準備したいと思ひますの。だから、暫らくの間、本当に美奈子さんの姉にして置いて下さいませ。『源氏物語』に、末摘花と云ふのがございませう。あれでございますの。」
さう云ひながら、瑠璃子は嫣然と笑つた。勝平は、妖術にでもかゝつたやうに、ぼんやりと相手の美しい唇を見詰めてゐた。瑠璃子は相手を人とも思はないやうに傍若無人だつた。
「ねえ! お父様! 妾《わたくし》の可愛いお父様! さうして下さいませ。」
さう云ひながら、彼女はそのスラリとした身体を、勝平にしなだれるやうに、寄せかけながら、その白い手を、勝平の膝の上に置いて静《しづか》に軽く叩いた。
瑠璃子の処女の如く慎しく娼婦の如く大胆な媚態に、心を奪はれてしまつた勝平は、自分の答が何《ど》う云ふことを約束してゐるかも考へずに答へた
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