センセイション》を起した丈《だけ》、それ丈花嫁の顔を、ジロ/\と見てゐるやうに、瑠璃子には思はれた。金《かね》で操を左右されたものと思はれてゐるかも知れないことが、瑠璃子には――勝気な瑠璃子には、死に勝る恥のやうにも思はれた。が、彼女は全力を振つて、さうした恥しさと戦つた。人は何とも思へ、自分は正しい勇ましい道を辿つてゐるのだと、彼女は心の中で、ともすれば撓みがちな勇気を振ひ起した。
 が、苦しんでゐるものは、瑠璃子|丈《だけ》ではなかつた。新郎の勝平と、一尺も離れないで、黙々と席に就いて居る父の顔を見ると、瑠璃子は自分の苦しみなどは、父の十分の一にも足りないやうに思つた。自分は、自分から進んで、かうした苦痛を買つてゐるのだ。が、父は最愛の娘を敵に与へようとしてゐる。縦令《たとひ》、それが娘自身の発意であるにしろ、男子として、殊に硬骨な父として、どんなに苦しい無念なことであらうかと思つた。
 が、苦しんでゐる者は、外にもあつた。それは今宵の月下氷人を勤めてゐる杉野子爵だつた。子爵は、瑠璃子が自分の息子の恋人であることを知つてから、どれほど苦しんでゐるか分らなかつた。瑠璃子に対する荘田の
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