を着ながら、ニコニコと入つて来た。
「やあ! お目出度うございます。お目出度うございます!」
 彼は勝平に、ペコ/\と頭を下げてから、その傍の新夫人に、丁寧に頭を下げたが、今迄は凡ての来客の祝賀を、神妙に受けてゐた瑠璃子は木下の顔を見ると、その高島田に結つた頭を、昂然と高く持したまゝ、一寸は愚か一分も動かさなかつた。勝手が違つて、狼狽する木下に、一瞥も与へずに、彼女は怒れる女王の如き、冷然たる儀容を崩さなかつた。

        三

 祝宴が開かれたのは、午後七時を廻つてゐた時分だつた。集合電燈《シャンデリア》の華やかな昼のやうな光の下に五百人を越す紳士とその半分に近い婦人とが淑《しとや》かに席に着いた。紳士は、大抵フロックコートか、五つ紋の紋付であつたが、婦人達は今日を晴と銘々きらびやかな盛装を競つてゐた。
 花嫁と云つたやうな心持は、少しも持たず、戦場にでも出るやうな心で、身体には錦繍を纏つてゐるものの、心には甲冑を装うてゐる瑠璃子ではあつたが、かうして沢山の紳士淑女の前に、花嫁として晒されると、必死な覚悟をしてゐる彼女にも、恥しさが一杯だつた。列席の人々は、結婚が非常な評判《
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