――恐らく七にはなるまい少女が姿を現した。色の浅黒い、眸のいきいきとした可愛い少女だつた。彼女は、兄の恥を自分の身に背負つたやうに、顔を真赤にしてゐた。
「お父様! お客様でございます。」
客に、丁寧に会釈をしてから、父に向つて名刺を差し出しながら、しとやかさうに云つた。傲岸な父の娘として、白痴の兄の妹として、彼女は狼に伍した羊のやうに、美しく、しとやかだつた。
「木下さん。これが娘です。」
さう云つた荘田の顔には、娘自慢の得意な微笑が、アリ/\と見えた。が、彼の眼が、開かれた扉《ドア》の所に立つて、キヨトンと室内を覗いてゐる長男の方へ転ずると、急にまた悄気てしまつた。
「あゝ美奈さん。兄さんを早う向うへ連れて行つてね。それから、杉野さんをお通しするやうに。」
娘に、優しく云ひ付けると、客の方へ向きながら、
「御覧の通りの馬鹿ですからね。唐沢のお嬢さんのやうな立派な聡明な方に、来ていたゞいて、引き廻していたゞくのですね。はゝゝゝゝ。」
馬鹿な長男が去ると、荘田は又以前のやうな得意な傲岸な態度に還つて行つた。
其処へ、小間使に案内されて、入つて来たのは、杉野子爵だつた。
「やあ
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