「瑠璃さん! あなたは、今夜は何《ど》うかしてゐる。お父様《とうさん》も、ゆつくり考へよう。あなたも、ゆつくりお考へなさい。あなたの考へは、余り突飛だ。そんな馬鹿なことが今時……」
「でも、お父様!」瑠璃子は少しも屈しなかつた。「妾《わたくし》は、毒に報いるのには毒を以てしたいと思ひます。陰謀に報いるには、陰謀を以てしたいと思ひます。相手が悪魔でも恥ぢるやうな陰謀を逞《たくまし》くするのですもの。此方《こつち》だつて、突飛な非常手段で、懲しめてやる必要があると思ひます。現代の社会では万能な金の力に対抗するのには、非常手段に出るより外はありません。妾《わたくし》は、自分の力を信じてゐるのでございます。あんな男一人滅ぼすのには余る位の力を、持つてゐるやうに思ひます。お父様! どうか妾《わたくし》を信じて下さいまし。瑠璃子は、一時の興奮に駆られて無謀なことを致すのではありません。ちやんと成算があるのでございます。」
 瑠璃子の興奮は何処までも、続くのだつた。父は黙々として、何も答へなくなつた。父と娘との必死な問答の裡に、幾時間も経つたのであらう、明け易い夏の夜は、ほの/″\と白みかけて居た。
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