ました。ホロフェルネスは、獅子を搏《てうち》にするやうな猛将でした。ベトウリヤの運命は迫りました。破壊と虐殺とが、目前に在りました。その時に、美しい少女が、ベトウリヤ第一の美しい少女が、侍女をたつた一人連れた切りで、羅衣《うすもの》を纏つた美しい姿を、虎のやうなホロフェルネスの陣営に運んだのです。そしてこの少女の、容色に魅せられた敵将を、閨中でたつた一突きに刺し殺したのです。美しい少女は、自分の貞操を犠牲にして、幾万の同胞の命と貞操とを救つたのです。その少女の名こそ、今申し上げたユーヂットなのでございます。」
八
瑠璃子の心は、勇ましいロマンチックな火炎で包まれてゐた。牝獅子の乳で育つたと云ふ野蛮人の猛将を、細い腕《かひな》で刺し殺した猶太《ユダヤ》の少女《をとめ》の美しい姿が、勇ましい面影が、蝕画《エッチング》のやうに、彼女の心にこびりついて離れなかつた。少女に仮装して、敵将を倒した日本武尊よりも、本当の女性である丈《だけ》に、それ丈《だ》け勇ましい。命よりも大切な、貞操を犠牲にしてゐる丈《だけ》に、限りなく悲壮であつた。
「妾《わたくし》はユーヂットのやうに、
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