て下さい! お父様!」
瑠璃子が、続けざまに、呼びかけても、父は返事をしなかつた。父が、何とも返事をしないことが彼女の心を、スツカリ動顛させてしまつた。恐ろしい不安が、彼女の胸に、充ち溢れた。彼女は、扉《ドア》を力一杯押した。その細い、華奢な両腕が、折れるばかりに打ち叩いた。
「お父様! お父様! お開けなすつて下さい!」
彼女の声は、狂女のそれのやうに、物凄かつた。魔物に、その可憐な弟を奪はれて、鉄の扉《ドア》の前で、狂乱するタンタヂールの姉のやうに、命掛の声を振搾《ふりしぼ》つた。
「お父様! 何うして茲をお閉めになるのです。茲をお閉めになつて何う遊ばさうとなさるのです。お開け下さい! お開け下さい。」
が、父は何とも返事をしなかつた。父が返事をしない事に依つて、瑠璃子は、目が眩むほど恐ろしい不安に打たれた。彼女は、ふと気が付いて、窓から入らうと、電《いなづま》のやうに、ヴェランダへ走つて出た。が、ヴェランダに面した窓には、丈夫な鎧戸が掩はれてゐた。彼女は、死物狂ひになつて、再び扉《ドア》の所へ帰つて来た。そして、必死に、そのかよわい[#「かよわい」に傍点]、しなやか[#「し
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