時々、やりますので。いや、閣下のお腹立《はらだち》は、全く御尤もです。私からも、主人に反省を促すやうに、申します事でございます。それでは、これでお暇《いとま》致します。」
 丁度|烏賊《いか》が、敵を怖れて、逃げるときに厭な墨汁を吐き出すやうに、この男も出鱈目な、その場限りの、遁辞を並べながら、※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]卒として帰つて行つた。
 さうだ! 父は最初の悪魔の突撃を物の見事に一蹴したのだつた。この次ぎの期限までには、半年の余裕がある。その間には、父の親友たる本多男爵も帰つて来る。さう思ふと、瑠璃子はホツと一息ついて安心しなければならない筈だつた。が、彼女の心は、一つの不安が去ると共に、又別な、もつと性質《たち》のよくない不安が、何時の間にか入れ換つてゐた。
「瑠璃さん! お前にも心配をかけて済まなかつたなう。もう安心するがいゝ。これで何事もないのだ。」
 父は、客が帰つた後で、瑠璃子の肩に手をかけながら慰め顔にさう云つた。
 が、瑠璃子の心は、怏々として楽しまなかつた。
『お父様! あなたは、あの大金を何うして才覚なさつたのです。』
 さう云ふ不安な、不快な
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