、俊寛は疲れて、針を水中に投じたまま、手を休めてしまう。
 その時に、突然かの少女が叫び始めた。俊寛は、最初彼女が、何か自分に話しかけているのではないかと思った。が、少女は天の一方を見詰めながら叫んでいる。そのうちに、俊寛は、その叫び声の中に、ある韻律《いんりつ》があるのに気がつく。
 そして、この少女が歌をうたっているのだということが分かる。それは朗詠《ろうえい》や今様《いまよう》などとは違って、もっと急調な激しい調子である。が、そのききなれない調子、意味のまったく分からない詞《ことば》の中に、この少女の迫った感情が漲《みなぎ》っているのを俊寛は感ぜずにはいられなかった。
 俊寛は、やるせなくこの少女がいとしくなる。歌い終ると、少女は俊寛の方へその黒い瞳の一|瞥《べつ》を投げる。俊寛はたまらなくなって立ち上り、少女の方へ進む。すると、今まで蹲っていた少女は、急に立ち上って五、六間向うへ逃げる。が、そこに立ち止まったまま、それ以上は逃げようとはしない。俊寛は、微笑をしながら手招きする。が、少女は微笑をもってそれに答えるけれども、決して近寄らない。俊寛は、じれて元の場所へ帰る。すると、少
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