俊寛
菊池寛
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)治承《じしょう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)北山|時雨《しぐれ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)磽※[#「石+角」、第3水準1−89−6]《ぎょうかく》な
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一
治承《じしょう》二年九月二十三日のことである。
もし、それが都であったならば、秋が更《た》けて、変りやすい晩秋の空に、北山|時雨《しぐれ》が、折々襲ってくる時であるが、薩摩潟《さつまがた》の沖遥かな鬼界《きかい》ヶ|島《しま》では、まだ秋の初めででもあるように暖かだった。
三人の流人《るにん》たちは、海を見下ろす砂丘《さきゅう》の上で、日向《ひなた》ぼっこをしていた。ぽかぽかとした太陽の光に浴していると、ところどころ破れほころびている袷《あわせ》を着ていても、少しも寒くはなかった。
四、五日吹き続いた風の名残りが、まだ折々|水沫《みなわ》を飛ばす波がしらに現れているものの、空はいっ
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