な鳥《とり》んとこに飛《と》んでってやろうや。」
と、彼《かれ》は叫《さけ》びました。
「そうすりゃあいつ等《ら》は、僕《ぼく》がこんなにみっともない癖《くせ》して自分達《じぶんたち》の傍《そば》に来《く》るなんて失敬《しっけい》だって僕《ぼく》を殺《ころ》すにちがいない。だけど、その方《ほう》がいいんだ。家鴨《あひる》の嘴《くちばし》で突《つつ》かれたり、牝鶏《めんどり》の羽《はね》でぶたれたり、鳥番《とりばん》の女《おんな》の子《こ》に追《お》いかけられるなんかより、どんなにいいかしれやしない。」
こう思《おも》ったのです。そこで、子家鴨《こあひる》は急《きゅう》に水面《すいめん》に飛《と》び下《お》り、美《うつく》しい白鳥《はくちょう》の方《ほう》に、泳《およ》いで行《い》きました。すると、向《むこ》うでは、この新《あたら》しくやって来《き》た者《もの》をちらっと見《み》ると、すぐ翼《つばさ》を拡《ひろ》げて急《いそ》いで近《ちか》づいて来《き》ました。
「さあ殺《ころ》してくれ。」
と、可哀《かわい》そうな鳥《とり》は言《い》って頭《あたま》を水《みず》の上《うえ》に垂《た》れ
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