》げる場所《ばしょ》は狭《せま》くなる一方《いっぽう》でした。そして、とうとうそれは固《かた》く固《かた》く凍《こお》ってきて、子家鴨《こあひる》が動《うご》くと水《みず》の中《なか》の氷《こおり》がめりめり割《わ》れる様《よう》になったので、子家鴨《こあひる》は、すっかりその場所《ばしょ》が氷《こおり》で、閉《と》ざされてしまわない様《よう》力《ちから》限《かぎ》り脚《あし》で水《みず》をばちゃばちゃ掻《か》いていなければなりませんでした。そのうちしかしもう全《まった》く疲《つか》れきってしまい、どうする事《こと》も出来《でき》ずにぐったりと水《みず》の中《なか》で凍《こご》えてきました。
 が、翌朝《よくあさ》早《はや》く、一人《ひとり》の百姓《ひゃくしょう》が[#「百姓が」は底本では「百性が」]そこを通《とお》りかかって、この事《こと》を見《み》つけたのでした。彼《かれ》は穿《は》いていた木靴《きぐつ》で氷《こおり》を割《わ》り、子家鴨《こあひる》を連《つ》れて、妻《つま》のところに帰《かえ》って来《き》ました。温《あたた》まってくるとこの可哀《かわい》そうな生《い》き物《もの》
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