う》は立派《りっぱ》だよ。」
と、例《れい》の身分《みぶん》のいい家鴨《あひる》はもう一|度《ど》繰返《くりかえ》して、
「まずまず、お前《まえ》さん方《がた》もっとからだをらくになさい。そしてね、鰻《うなぎ》の頭《あたま》を見《み》つけたら、私《わたし》のところに持《も》って来《き》ておくれ。」
と、附《つ》け足《た》したものです。
 そこでみんなはくつろいで、気《き》の向《む》いた様《よう》にふるまいました。けれども、あの一|番《ばん》おしまいに殻《から》から出《で》た、そしてぶきりょうな顔付《かおつ》きの子家鴨《こあひる》は、他《ほか》の家鴨《あひる》やら、その他《た》そこに飼《か》われている鳥達《とりたち》みんなからまで、噛《か》みつかれたり、突《つ》きのめされたり、いろいろからかわれたのでした。そしてこんな有様《ありさま》はそれから毎日《まいにち》続《つづ》いたばかりでなく、日《ひ》に増《ま》しそれがひどくなるのでした。兄弟《きょうだい》までこの哀《あわ》れな子家鴨《こあひる》に無慈悲《むじひ》に辛《つら》く当《あた》って、
「ほんとに見《み》っともない奴《やつ》、猫《ねこ》
前へ 次へ
全39ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング