かりなのよ。いつまでもそう思っていたいわ。でも、どうでもいいわ。どうでもいいわ。」
セエラは、燃え立つ火の前に跪いて、火に手をかざして見ました。火に手を近づけすぎたので、熱さのあまり飛びさがりました。
「夢で見ただけの火なら、熱いはずはないわ。」
セエラは飛び上って、テエブルや、お皿や、敷物に手を触れて見ました。それから、寝台の毛布に触ってみました。柔かな綿入の服を取り上げて、ふいに抱きしめ、頬ずりしました。
「温かくて、柔かだわ。本物に違いないわ。」
セエラはその服をひっかけて、スリッパを穿きました。それから、よろよろと本の所へ行き、一番上の一冊を開いてみました。
『屋根裏部屋の少女へ、友人より』
扉にそう書いてあるのを見ると、セエラはその上に顔を伏せて、泣き出しました。
「誰だか知らないけど、私に気を付けて下さる方があるのだわ。私にも、お友達があるのだわ。」
セエラは蝋燭を持ってベッキイの所に行きました。ベッキイは眼を覚して、緋色の綿入服を着たセエラを見ると、吃驚《びっくり》して起き上りました。昔のままのプリンセス・セエラが立っていると、ベッキイは思いました。
「ベッキイ
前へ
次へ
全250ページ中198ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング