? 誰か来やアしないかい? あの子がだしぬけに戻って来るようなことはないかい? 僕達が来ているのを見つけでもしたら、あの子はたまげてしまうだろう。すると、カリスフォドさんのせっかくの計画も、水の泡になるからね。」
ラム・ダスはそっと戸口に身をよせて立ちました。
「あの子の他、誰も来るはずはありません。今日は手籠を持って出て行きましたから、なかなか戻っては来ないでしょう。それに、ここに立ってさえいれば、誰の足音だって、梯子を登りきらぬうちに聞えるから、大丈夫です。」
「じゃア、しっかり耳を澄ましていてくれたまえ。」
秘書はそういうと、部屋の中を静かに歩き廻って、そこにあるものを手早く手帳に書き込みました。彼はまず寝台をおさえて、思わず声をあげました。
「まるで石だ。あの子のいない間に取りかえておかなければ。何か、特別の方法で持ち込むんだね。今夜は、とてもだめだろうが。」
彼は汚れた夜具や、火のない炉などを見廻り、それらのものを書きこんだ一枚を手帳から破り取って、ポケットに入れました。
「だが、妙なことを始めたものだね。誰がこんなことをするといい出したんだい?」
「実は、私が初めに思
前へ
次へ
全250ページ中174ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング