話したことはないのですが、セエラについてなら、何でも詳しく語ることが出来ました。
「子供というものは、何とでも友達になるものでございますよ。私がそっと来て、ここから覗いておりますと、あの子は、雀や鼠まで手なずけているんでございますよ。ここの奴隷娘は、毎日あの子を慰めに来ます。こっそりあの子に会いに来る小《ちい》ちゃな子もございます。それから、その子よりは大きい子で、あの子の話を倦《あ》きもせず聞いている子も一人ございます。女主人などは、あの子をまるで非人《ペエリア》扱いにしていますが、でも、あの子は王族の血でもひいてるような挙止《ものごし》をしています。」
「君は、だいぶ詳しく知っているようだね。」
「あの子の生活なら、何でも毎日見て知っております。出かけて行くのも、戻ってくるのも、知っております。凍えていることも、ひもじいことも、夜中まで勉強していることも、知っております。子供達が忍んで来ると、あの子もうれしいと見え、ひそひそと話したり、笑ったりしています。病気にでもなったらすぐ判りますから、そんな時には、出来ることなら、来て看護してやりたいと思っております。」
「でも君、大丈夫かい
前へ 次へ
全250ページ中173ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング