るのだい?』とね。」彼はカアマイクル氏の手をしかと掴んで、握りしめました。「私は、それに返事が出来るようにならなければならん。どうか、あの娘を見付けてくれ。頼む。」
* * *
* * *
壁の向うでは、セエラが、晩の食事にまかり出て来たメルチセデクと話していました。
「メルチセデクや、今日という今日は、宮様《プリンセス》のつもり[#「つもり」に傍点]も辛かったわよ。いつもどころの辛さじゃアなかったわよ。だんだん寒くなって、往来がじめじめして来ると、私の務は辛くなるばかりだわ。ラヴィニアったら、私が裾を泥んこにしているって、嗤うのよ。私、思わずかっとして、危《あぶな》く何かやり返してやるところだったけど――でも、やっと我慢したの。かりにも宮様《プリンセス》が、ラヴィニアみたいな下等な人の相手になるわけにはいきませんものね。でも、舌でも噛まなきゃア我慢出来なかったわ、私自分の舌を噛んだの。今日はお午《ひる》すぎから、とても、寒くなったのね。今夜も寒いわ。」
ふと、セエラは黒髪を両手
前へ
次へ
全250ページ中158ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング