。――アルフレッド大帝は、牛飼のおかみさんにお菓子を焼かされ、横面《よこつら》を張りとばされました。牛飼のおかみさんは、あとで自分のした事に気づいて、どんなに空恐ろしくなったでしょう。もしミンチン先生に、セエラがほんとうの宮様《みやさま》だと解ったら、先生はどんなに狼狽《あわて》るでしょう。――その時のセエラの眼付がたまらなかったので、ミンチン先生は、いきなりセエラの横面を張りとばしました。今考えていた牛飼の女のした通りのことをしたわけです。セエラは夢から醒めて、この事に気がつくと、思わず笑い出しました。
「何がおかしいんです。ほんとにずうずうしい子だね。」
 セエラは、自分が宮様《プリンセス》だったということをはっきり思い出すまで、ちょっとまごまごしていました。
「考えごとをしていたものですから。」
「すぐ『御免なさい』といったらいいだろう。」
 セエラは答える前に、ちょっと躊躇《ためら》いました。
「笑ったのが失礼でしたら、私あやまりますわ。でも、考えごとをしていたのは、悪いとは思えません。」
「いったい何を考えていたのだい? え? お前に、何が考えられるというのさ。」
 ジェッシ
前へ 次へ
全250ページ中147ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング