では――セエラはがっかりしてしまいました。
「私は、もうすぐ死んでしまうよ。」
 そういわれても、エミリイは、うつろな眼を見開いているばかりでした。
「もう我慢が出来ないわ。寒いし、着物は濡れてるし、お腹は死にそうに空いているんだもの。死ぬにきまってるわ。朝から晩まで、まア何千里歩いたことだろう。それなのに、料理番の要るものが見付からなかったからといって、晩御飯を食べさせてくれないの。ぼろ靴のおかげで、私が辷《すべ》ったら、皆は私を嗤《わら》うのよ。私は泥まみれになってるのに、皆はげらげら笑ってるのさ。エミリイ、わかったかい?」
 エミリイの硝子玉《ガラスだま》の眼や、不服もなさそうな顔付を見ると、セエラは急にむかむかして来ました。彼女は小さい手を荒々しく振り上げて、エミリイを椅子から叩き落しますと、急に欷歔《すすりな》きはじめました。セエラが泣くなどとは、今までにないことでした。
「お前はやはり、ただの人形なのね。人形よ、人形よ。鋸屑のつまってる人形に、何が感じられるものか。」
 ふと、壁の中にただならぬ物音が起りました。メルチセデクが誰かを折檻《せっかん》しているのでした。
 セエ
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