志賀直哉氏の作品
菊池寛
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)積《つも》り
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自分は現代の作家の中で、一番志賀氏を尊敬している。尊敬しているばかりでなく、氏の作品が、一番好きである。自分の信念の通りに言えば、志賀氏は現在の日本の文壇では、最も傑出した作家の一人だと思っている。
自分は、「白樺」の創刊時代から志賀氏の作品を愛していた。それから六、七年になる。その間に自分はかつて愛読していた他の多くの作家(日本と外国とを合せて)に、幻滅を感じたり愛想を尽かしたりした。が、志賀氏の作品に対する自分の心持だけは変っていない。これからも変るまいと思う。
自分が志賀氏に対する尊敬や、好愛は殆ど絶対的なもので従って自分はこの文章においても志賀氏の作品を批評する積《つも》りはないのである。志賀氏の作品に就いて自分の感じている事を、述べて見たいだけである。
志賀氏は、その小説の手法においても、その人生の見方においても、根柢においてリアリストである。この事は、充分確信を以て言っ
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