碁は、誰にも負けない!)と、豪語した。また自分に不利な三目ではあるが、五番つづけざまに負けた。この表には、かいてないが、もう一番自分は、四目になるのを嫌って三目で打って負けたように記憶している。
 だが、四目になると、最初の一番は直木が有利な形勢であったのを、最後まで打って見ると意外にも、僕が一目の勝であった。その後、直木の碁は非常に粗雑になって、四番自分が連勝した。そして、三目になった。ところが三目でも自分が勝った。二月の初旬に、彼は入院の準備を始めていた。そして、入院したら暫く会えないことを憂いてか、大阪にいる老父を訪ねて行った。帰って来たのは、六日か七日である。
 八日の晩に会ったとき、直木は非常に憔悴していた。いつもは(一番やろう)と云って、自分が誘うのであるが、その日は直木の容子が、あまりに悪そうなので、自分が控えていると、直木の方が(一番やろうか)と云った。
 最初は、直木は中央に大模様を作って、自分は策の施しようがない気がした。しかし、打っている内に、直木の石は、バラバラになって、自分は大勝した。横に見ていた人が、直木をからかった。自分は、直木の病勢が、わるいのを知ってい
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