形
菊池寛
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)摂津《せっつ》半国の主であった
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三間|柄《え》の大身の鎗の
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摂津《せっつ》半国の主であった松山新介の侍大将中村新兵衛は、五畿内中国に聞こえた大豪の士であった。
そのころ、畿内を分領していた筒井《つつい》、松永、荒木、和田、別所など大名小名の手の者で、『鎗《やり》中村』を知らぬ者は、おそらく一人もなかっただろう。それほど、新兵衛はその扱《しご》き出す三間|柄《え》の大身の鎗の鋒先《ほこさき》で、さきがけ殿《しんがり》の功名を重ねていた。そのうえ、彼の武者姿は戦場において、水ぎわ立ったはなやかさを示していた。火のような猩々緋《しょうじょうひ》の服折を着て、唐冠|纓金《えいきん》の兜《かぶと》をかぶった彼の姿は、敵味方の間に、輝くばかりのあざやかさをもっていた。
「ああ猩々緋よ唐冠よ」と敵の雑兵は、新兵衛の鎗先を避けた。味方がくずれ立ったとき、激浪の中に立つ巌のように敵勢をささえている猩々緋の姿は、どれほど味方にとってたのもしいものであったかわからなかっ
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