が起ったぞ。綾郡《あやごおり》二十三カ村に、御年貢御免を嘆願の一揆が起ったぞ。
おきん なるほどのう。一揆でも起ろうぞ。ええ気味じゃ。
勘五郎 それでな、だんだんお城下の方へ押し寄せてくるいうのじゃ。
おきん なるほどのう。
勘五郎 それでな、もう端岡《はしおか》までは来とる、いう噂じゃけに、この村でも、加担するか加担せんか、今のうちに定《き》めとこうていうてな、八幡さまで、村の若い衆の集りがあるのじゃ。
おきん 恐ろしいことになったのう。
勘五郎 一揆もええがのう、後が悪いからのう、あんまり、有頂天になってやっとると、後で磔《はりつけ》じゃからのう。
おきん 恐ろしい、恐ろしい。飢えて死ぬと磔とどちらがええじゃろ
勘五郎 じゃ、俺は、急ぐけにな、みんな帰ったら、よこしてくれんかのう。村の集りにはずれると後が悪いぞ。
おきん ええわ、わかった。甚三と甚作とを探して、すぐやるけにな。
勘五郎 じゃ、ええか。暮六つまでには、集るんじゃぞ。
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(勘五郎去る。おきん、不安らしく考え込みたる後兄弟をたずねるべく、つづいて退場する。――間――牛小屋に
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