しゃ、石を投げたんじゃ。投げたんに違いないんじゃ。
甚吉 何ぬかす。この阿呆め!
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(甚兵衛を叩こうとする。村人七、八止める)
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村人七、八 何するんじゃ。仮にも、兄たるものに、手をかけるやっがあるけ。
甚吉 お前さんたちじゃ。お前さんたちじゃ。こなな阿呆のいうことを取り上げて、こなな阿呆を下手人にして、罪を逃れようとして。庄屋どんも、きこえんぞ。阿呆はええけど、阿呆につながる親兄弟の難儀をどうするんじゃ。
村人七 なんやと。こなな阿呆じゃと。そなな阿呆を、どうして一揆に出したんじゃ。おぬしのような利口な息子が三人もあるのに、そなな阿呆を何故一揆に出したんじゃ。甚兵衛が石を投げたというのも、みんな、お前たちが投げさしたんじゃないか。
甚吉 ええ、何をぬかす。お前たちが皆、よってたかってこの阿呆になすりつけたんじゃないか。
村人八 何ぬかす、そなな阿呆なら、なぜ一揆にやるんじゃ。
村人たち そうじゃ。そうじゃ。
甚吉 (甚兵衛に取りすがって)早う、いうたことを取り消せ。松
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