村《よそ》の衆じゃ。
甚兵衛 そうけ。
甚作 兄や、わりゃ、何も知らないで、そななこというが、いうとたいへんなことになるぞよう。今の嘘じゃといえ、早ういえ!
甚兵衛 嘘じゃねえ。われこそ、何いうだ。早う家へ帰っとれ!
甚作 よし、帰っておっ母にいってやる。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから4字下げ]
(甚作飛ぶように駆け去る)
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
茂兵衛 甚兵衛どの、こっちへござっしゃれ。
甚兵衛 おうなんじゃ、庄屋どん。
茂兵衛 おぬし、石を投げたに相違ないか。
甚兵衛 おう、投げたとも。一つはこなにでっかいやつじゃ。
茂兵衛 誰を目当てに投げたんじゃ。
甚兵衛 誰彼なしじゃ。わしゃ、皆が投げていたけに一緒に投げたんじゃ。
茂兵衛 甚兵衛どの。おぬしは、この村の難儀を救うてくれるか。
甚兵衛 わしゃ、何がなんだか知らねえだ。
茂兵衛 おぬしが、松野様に石を投げたというてくれると、この村の者が、みんな助かるのじゃ。この村の者は、お前を神様のように、一生あがめるのじゃ。どうじゃ松野様に石を投げたというてくれるか。
甚兵衛 わしは、
前へ
次へ
全52ページ中37ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング