誰ぞ出てくれい。誰ぞ出てくれ。
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(一座また静まって声を発するものなし)
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茂兵衛 じゃ、皆覚えがないというなら、わしゃ、そういってお奉行様に、お返事申し上げるほかはないぞ。念のためにもう一度だけ、きこう、あの騒動のときに、誰ぞ石を投げたものはないか。あの騒動のときに、誰ぞ石を投げたものはないか。石を投げた人は村のためじゃと思って出てくれ。
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(甚兵衛は、最初より茫然として、人々の話をきいていない。ただ庄屋の最後の声が大きいので、ふと耳をかたむける)
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村年寄甲 さあ、今じゃぞ、石を投げた覚えのある人は出てくれ。
村年寄乙 村を救うてくれるのなら、今じゃぞ。今出てくれんと、村はえらい難儀になるんじゃ。
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(村年寄の絶叫する声を聞いて、甚兵衛むくむくと立ち上る。甚作驚いて制止しようとする)
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