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村人八 甚兵衛どん。遅かったのう。
甚兵衛 (黙ってうなずく)……。
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(甚作、甚兵衛に寄り添うて座ろうとする)
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村人七 甚作、わりゃ、何しに来ただ。
甚作 おっ母が、ついて行けいうけに。
村人七 何やって、おっ母がそんなことをいうんじゃ。今日の集りは、一揆について行ったものだけの集りじゃぞ。
甚作 じゃけどもな、おっ母が、兄やは少し足らんけにな、寄合の席へやこし、一人でやるのは、心元ないいうけにな。
村人七 えろう、勝手なこと、いいやがるやつじゃのう。そなな心もとない甚兵衛を、どうしてまた、一揆にやこし一人で出したんじゃ。あんまり、得手勝手なことをしていると天罰が恐ろしいぞと、おっ母にいってやれ。
甚作 (言葉もなく黙してしまう)……。
勘五郎 ほんまじゃ。おっ母にな、少しいってやれよ。あんまりひどいことをするとな、人間がゆるしても、神様が許さんていうてな。
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(甚作は、顔を赧《あか》らめて、さしうつむい
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