じゃ。
村人八 お上も、無理じゃないか。郡奉行様が一揆に殺されたのが弦打村の地境の内だからというて、弦打村から下手人を出せというて、あんまり聞えんじゃないか。
村年寄乙 じゃけど、そうでもせな、下手人が出んのじゃ。下手人が出んと、お上の御威光にかかるけにな。
村人六 えらい、災難じゃのう。
勘五郎 ええことは、二つないわ。一揆のおかげで御年貢御免になったかと思うと、すぐこなな無理な御詮議じゃ。一昨日《おととい》、御坊川で一揆の発頭人も磔になったというから、下手人が出たら磔は逃れんのう。
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(一座、しんとしてしまう。その時甚兵衛が、末弟の甚作と一緒に来る)
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村人七 ああ甚兵衛どんが来た。甚兵衛どんが来た。
村人四 相変らず、にこにこしとるわい。あの人は、他人には、いつも愛想がええわ。
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(甚兵衛、蒼白な顔に微笑を堪《たた》え、皆にぺこぺこ頭を下げて、隅の方へ座る)
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