。ああうまいことした。甚作、厄逃れのお祝いに、神棚へお灯明であげいよ。
甚作 一揆の大将がいうとった。昔山本勘介いうて、えらい軍師があったというてのう。けどおっ母の方が、もっと偉い軍師じゃのう。
おきん どうじゃ。年が寄っても、こななものじゃ。ははははは。
兄弟三人 あはははは。
甚吉 あの不具者め。あははははは。
親子四人 あははははははははは。
[#地から1字上げ]――幕――

          第二幕

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第一幕より、十日ばかりを経たるある日の夜、弦打村庄屋茂兵衛の家の広間。村人たち縁側にも庭にも満ちている。座敷には、ところどころに百目蝋燭が燃えている。庭には、篝火が三カ所ばかりに焚かれている。人数の割合に静粛である。みんな不安と恐怖とに囚われているのがわかる。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
村年寄甲 (縁側に立って見回しながら)もう皆集ったかのう、本津《もとつ》の吾作は来たか。
村人一 来ただ。ここに来ているぞ。
村年寄甲 新田の新吉は見えんのう。
村人二 まだ来とらんが、さっき来るときに誘うとな、山へ行っとる
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