おきん さあ、皆して、放《ほお》り込んでしまえ! これからは、粟の飯ももったいないや。水だけでたくさんじゃ。
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(三人は、母にいわれたごとく甚兵衛を手込めにして、牛小屋へ入れる)
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甚兵衛 どうするだ! 何するだ! われたち! この兄をどうするだ!
甚吉 何が、兄だい! われのような不具の阿呆を誰が兄に持つものけ。
甚兵衛 どうするだ! どうするだ!
甚三 (次兄に加勢しながら)ええ、黙って、この中にすっこんでおれ!
甚作 (同じく手を貸して、担ぎ上げながら、二人の兄のよりは、やや優しく)盗み食いやこしするけに、こなな目にあうのじゃ。おとなしゅう、小屋の中へ入っているがええぞ。
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(三人、※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]《もが》いている甚兵衛を、牛小屋の中へ担ぎ込んでしまう)
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甚兵衛 何するだ! どうするだ。(叫びながら、担ぎ込まれる
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