芥川の事ども
菊池寛

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)数年来|萌《きざ》していた

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)数年来|萌《きざ》していた

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、底本のページと行数)
(例)冒※[#「※」は「さんずい+賣」、読みは「とく」、第3水準1−87−29、24−下段16]
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 芥川の死について、いろいろな事が、書けそうで、そのくせ書き出してみると、何も書けない。
 死因については我々にもハッキリしたことは分らない。分らないのではなく結局、世人を首肯させるに足るような具体的な原因はないと言うのが、本当だろう。結局、芥川自身が、言っているように主なる原因は「ボンヤリした不安」であろう。
 それに、二、三年来の身体的疲労、神経衰弱、わずらわしき世俗的苦労、そんなものが、彼の絶望的な人生観をいよいよ深くして、あんな結果になったのだろうと思う。
 昨年の彼の病苦は、かなり彼の心身をさいなんだ。神経衰弱から来る、不眠症、破壊された胃腸、持病の痔などは、相互にからみ合って、
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